1.このページの目的
医療機器の製造販売業許可を取ろうとすると、似た名前の省令が3つ出てきます。体制省令・QMS省令・GVP省令。どれも「品質」や「体制」に関係する言葉が並ぶため、最初はまず区別がつきません。
特に混乱しやすいのが体制省令です。「QMS省令に適合していれば体制省令もクリアできる」と考えてしまうと、許可申請の準備が空振りになります。この2つは目的も適用場面も違います。
このページでは、体制省令が何を求めているのかを条文に沿って整理し、QMS省令・GVP省令との違いを一枚の表にしたうえで、許可取得をどう進めるかまでをまとめます。
2.体制省令とは
正式名称は「医療機器又は体外診断用医薬品の製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令」(平成26年厚生労働省令第94号)です。長いので実務では「体制省令」「QMS体制省令」と呼ばれます。
根拠は薬機法第23条の2の2第1号です。同条は、医療機器製造販売業の許可を「与えないことができる」場合を列挙しており、その第1号が「製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき」としています。この省令が体制省令です。
つまり体制省令は、製造販売業許可そのものの要件です。ここに適合していなければ許可が下りません。本則わずか4条の短い省令ですが、位置づけは重いものです。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第1条 | 趣旨 |
| 第2条 | 定義(第一種〜第三種医療機器製造販売業者、体外診断用医薬品製造販売業者) |
| 第3条 | 製造管理・品質管理に係る業務を行う体制の基準(本体) |
| 第4条 | 準用(選任外国製造医療機器等製造販売業者等) |
3.体制省令・QMS省令・GVP省令の違い
ここが本題です。3つを並べると役割の違いがはっきりします。
| 体制省令 | QMS省令 | GVP省令 | |
|---|---|---|---|
| 何のための基準か | 製造販売業者に体制があるか | 製品の製造管理・品質管理の方法 | 市販後の安全管理の方法 |
| いつ効くか | 業の許可の要件 | 主に品目の承認・認証と適合性調査 | 業の許可の要件 |
| 根拠 | 薬機法第23条の2の2第1号 | 薬機法第23条の2の5第2項第4号ほか | 薬機法第23条の2の2第2号 |
| 省令 | 平成26年厚生労働省令第94号 | 平成16年厚生労働省令第169号 | 平成16年厚生労働省令第135号 |
| 審査の場面 | 許可申請時の調査 | QMS適合性調査 | 許可申請時の調査 |
整理すると次のようになります。
- 体制省令とGVP省令は「業(ぎょう)の許可」の2本柱です。薬機法第23条の2の2の第1号と第2号が、それぞれ対応しています
- QMS省令は主に「品目」と「製造所」の話です。承認・認証を受けるときのQMS適合性調査で問われます
体制省令の条文が「製造管理等基準省令(=QMS省令)で要求される事項を確立・実施・維持するための組織体制」を求めている、という関係です。QMS省令が「何をやるか」、体制省令が「それをやれる体制が社内にあるか」と考えると整理しやすくなります。
令和3年の「法令遵守体制」とは別物です
もうひとつ紛らわしいものがあります。令和3年8月1日から施行された法令遵守体制(薬機法第23条の2の15の2、薬機法施行規則第114条の68の2)です。
どちらも「体制」という語が使われますが、まったく別の制度です。体制省令は平成26年からある許可要件、法令遵守体制は令和3年に導入された、責任役員(経営陣)に法令遵守の体制構築を義務づける規定です。解説記事によっては両方を「体制省令」と呼んでいることがあるので、根拠条文で確認してください。
*法令遵守体制と三役の関係は「医療機器の三役とは」で解説しています。
4.体制省令が求めること(第3条)
体制省令の中身はほぼ第3条に集約されています。第1項が組織体制、第2項が人員配置という構成です。
(1)第1項──組織体制
- 品質管理監督システムの文書化及びその実効性の維持に必要な体制
- QMS省令で要求されるすべての要求事項・手順・活動・実施要領の確立、実施及び維持のための組織体制
- 品質管理監督文書の管理及び保管に必要な体制
- 記録の管理及び保管に必要な体制
- その他QMS省令の遵守に必要な組織体制
注目したいのが「実効性の維持」という言葉です。文書を作って終わりではなく、それが機能し続ける体制まで求められています。手順書一式を外部から購入して棚に置いただけ、という状態は想定されていません。
(2)第2項──人員配置
- 医療機器等総括製造販売責任者を適切に配置し、その業務を適正に行わせること
- 管理監督者を適切に配置し、QMS省令を遵守する体制を構築すること
- その他、遵守に必要な人員の配置を適切に行うこと
ここでいう管理監督者は、QMS省令上の用語で、事業所の最高位の責任者を指します。総括製造販売責任者とは別の概念です。小規模な事業者では同一人物になることもありますが、役割としては区別されています。
*総括製造販売責任者・国内品質業務運営責任者・安全管理責任者の資格要件と兼務については「医療機器の三役とは|総括・国内品質・安全管理の要件と兼務の可否」で詳しく扱っています。
5.許可審査で確認されること
許可申請では、体制省令とGVP省令への適合が調査されます。実際に確認される主な点は次のとおりです。
- 組織図と、そこに三役および管理監督者が位置づけられているか
- 責任者が資格要件を満たすことを示す記録(卒業証明書、実務経験の証明など)
- 手順書の整備状況と、文書・記録の管理保管の仕組み
- 品質保証部門が販売部門から独立しているか
- 事務所の実体(総括製造販売責任者が業務を行う場所として機能するか)
自治体の監視指導では、「責任者を任命していたが、その要件を手順書に規定しておらず、要件を満たしているか不明だった」という指摘事例が公表されています。人を決めただけでは足りず、要件を文書に書き、満たすことを記録で示せる状態までが体制です。
*調査の運用は都道府県によって異なります。申請前に所管の薬務課へ確認されることをおすすめします。
6.許可取得は「全体計画」から始める
体制省令の条文を読んでも、自社が何から手をつければいいのかは出てきません。実務では、最初に全体計画を1枚作ることをおすすめしています。
凝った文書である必要はありません。PowerPointなどで簡単な計画書を作り、全体像を一覧できる形にしておくだけで、その後の作業がまとまります。盛り込む項目は次のとおりです。
- 目的──なぜ許可を取得するのか
- 製品──何を扱うのか、クラス分類は何か
- 許可種別──第一種/第二種/第三種のどれか
- 取得期限──いつまでに取るのか
- 法令要求事項の概略──体制省令、QMS省令、GVP省令など
- 現状とのギャップ──いま何が足りていないか
- ギャップを埋めるための対応策
法令要求事項の洗い出しが一番時間を食う
初めて計画を立てる場合、法令要求事項の洗い出しで手が止まります。条文を最初から読み込もうとすると、それだけで何日もかかります。
現実的な進め方は、都道府県が公開している手引きやホームページの記載を、まず計画書に引用して貼り付けてしまうことです。東京都や大阪府などは、許可申請に必要な事項を実務者向けに整理して公開しています。そこから始めて、後から自社の状況に合わせて肉付けすれば、短時間で実用的な計画書になります。
ゼロから条文を組み立てるより、行政が整理したものを土台にして差分を埋めるほうが、結果的に早く、漏れも少なくなります。
*許可取得の全体像は「医療機器ビジネスの新規参入」、業態ごとの整理は「医療機器製造販売業の許可要件」をご覧ください。
7.参考になる公開資料
体制省令については、行政が講習会用に作成した解説資料がWeb上で公開されています。条文だけでは掴みにくい運用のイメージを補うのに有用です。
*外部サイトの資料です。リンク先の内容および公開状況は変更される場合があります。制度の適用にあたっては、最新の一次情報をご確認ください。
8.よくある誤解
(1)「QMS省令に適合していれば体制省令もクリアできる」
別の基準です。QMS省令は製造管理・品質管理の方法、体制省令はそれを実行できる組織と人がいるかを見ます。許可申請では体制省令への適合が問われます。
(2)「体制省令=令和3年の法令遵守体制」
別の制度です。体制省令は平成26年の許可要件、法令遵守体制は令和3年施行で責任役員に体制構築を義務づけるものです。
(3)「手順書を用意すれば体制は整う」
条文は文書化とあわせて「実効性の維持」を求めています。文書があっても、運用する人と仕組みがなければ体制とはいえません。
(4)「責任者を決めれば足りる」
誰を置くかだけでなく、その要件を手順書に規定し、満たすことを記録で示せることまでが求められます。監視指導の指摘事例で繰り返し挙げられている点です。
9.ご注意
本ページは公開されている法令・通知および自治体の公表資料に基づいて記載しています。許可審査で確認される事項や運用は所管の都道府県によって異なります。申請の準備にあたっては、所管の薬務課への事前確認と一次情報の確認をお願いいたします。制度改正により内容が最新でない場合があります。