
1.はじめに
医療機器ビジネスに新規参入するためには、薬機法の規制をクリアしなければなりません。
まずは、薬機法の全体図を理解しましょう。
2.新規参入で越えなければならない3つのハードル
1. 業許可・登録・届出
事業として医療機器を扱うための入り口です。業態によって「許可」か「登録」か「届出」かが異なります(詳細は下記4章)。
2. 品質マネジメントシステム(QMS)
医療機器は「作って終わり」ではなく、継続的に品質を保証できる体制があることが許可等の条件になります。製造販売業、製造業ではQMS省令やISO13485といった規格に沿った体制整備が必要です。
用語解説:QMS省令とは? 医療機器の製造や品質管理に関する基準のことです。製品の品質を均一に保つため、社内手順書の整備と手順通りの確実な運用が求められます
3. 市販後安全管理(GVP)
製品を市場に出した後も、不具合情報の収集・苦情対応・回収対応などの体制を維持する必要があります。これは主に製造販売業者に課される義務です。
用語解説:GVP省令とは? 出荷後の安全管理(医療現場からの不具合情報の収集、安全対策、必要に応じた回収対応など)を行うための基準です。
3.新規参入でつまずきやすいポイント
- 業態の見誤り:自社が「製造販売業」なのか「販売業」なのかを誤って申請準備を進めてしまうケース
- 完璧主義による停滞:すべての体制を完璧に整えてから動こうとして、着手が大幅に遅れるケース
- QMS・GVPの後回し:許可取得だけをゴールにしてしまい、取得後の運用体制(QMS・GVP)の準備が追いつかないケース
特に実際の現場では、以下のような具体的なトラブルで計画がストップしてしまう事例が多く見られます。
現場でよくある失敗事例
① 手順書と運用の乖離による実地調査の指摘
他社のテンプレートをそのまま流用してQMS手順書を作成した結果、自社の実際の作業フローと合致せず、行政審査(実地調査)の際に「手順書運用されていない」と指摘を受けて不適合となり、大幅な修正対応に追われるケース。
② 責任者の資格要件不足による申請直前の計画遅延
許可申請の直前になって、社内で予定していた「総括製造販売責任者」等の候補者が、薬機法上の法的要件(実務経験年数や指定学科の履修実績など)を満たしていないことが判明し、急遽外部からの人材採用が必要になって参入計画が数か月遅延するケース。
いずれも、最初に自社の業態と製品クラスを確定し、必要最小限の実務に即した準備から進めることで回避可能です。
4.事業形態の選び方:業態分類4つの類型
医療機器ビジネスに関わる事業者は、4つの「業態」(〜業)に分類されます。自社がどの業態に当たるかを見極めることが、必要な許可等を特定する前提となります。
- 製造業:設計・主たる組立て等の特定の工程を担う施設が対象。→ 詳しくは「製造業」へ
- 製造販売業:医療機器を国内市場に出荷する「元売り」。市場への最終責任を負います。→ 詳しくは「製造販売業」へ
- 販売業・貸与業:製造販売業から供給された医療機器を、医療機関等のエンドユーザーへ届けます。→ 詳しくは「販売・貸与業」へ
- 修理業:市場に出た医療機器の修理・点検を行います。→ 詳しくは「修理業」へ

5.製品クラス
医療機器は、人体に与えるリスクの大きさに応じて分類されます。リスクが大きいほどクラスの数値が上がり、規制が厳格になります。→ 詳しくは「クラス分類」へ
用語解説:特定保守管理医療機器とは? 保守点検や修理に専門的な知識・技術を必要とし、不具合が生じた場合に人体へ重大な影響を与えるおそれがある医療機器のことです。クラス分類に関わらず、取り扱う際には販売業などの許可が必須となります。
| クラス | 薬機法上の分類 | 製造販売の手続き | 製造販売業許可 |
|---|---|---|---|
| クラス1 | 一般医療機器 | 届出 | 第三種 |
| クラス2 | 管理医療機器 | 原則:認証 (基準がなければ承認) | 第二種 |
| クラス3 | 高度管理医療機器 | 原則:承認 (指定品目は認証) | 第一種 |
| クラス4 | 高度管理医療機器 | 承認のみ | 第一種 |
自社製品がどのクラスに該当するかで、必要な手続きも業態許可も変わります。事業計画を立てる前に、まず一般的名称(JMDN)を特定してクラスを確定させてください。ここが決まらないと、費用も期間も見積もれません。

6.必要な行政手続き(許可・登録・届出)
- 製造販売業:許可
- 製造業:登録(全工程が対象ではなく、設計・主たる組立て等・滅菌・最終製品の保管など特定の工程のみ)
- 販売業・貸与業:取り扱う製品のクラスにより「許可」「届出」「手続き不要」が分かれる(下図参照)。特定保守管理医療機器に該当する製品は、クラスに関わらず許可が必要(下図オレンジ枠)
- 修理業:許可 *修理区分(特定保守管理医療機器とそれ以外の医療機器、それぞれ第1〜第9区分)ごとに取得が必要

7.許可要件:許可、登録、届出の違い
「許可」「登録」「届出」は、事業開始前に行政機関へ手続きを行う点で共通ですが、求められる要件の重さや審査の厳しさが異なります。
- 許可:最も厳格。実地調査が行われます。
- 登録:許可より簡易な実地調査が行われます。
- 届出:実地調査はなく、書類提出のみです。

自社がどの業態・クラスに該当するかが見えてきたら、次はクラス分類ごとの必要手続きで、届出・認証・承認のどれに進むのかを確認してください。各業態の詳しい要件は、4章の各リンク先にまとめています。
8.関連ページ
自社製品の該当性とクラス分類を確認し、必要な手続きへ進むための解説ページです。
- 医療機器のクラス分類とは|クラス1〜4の違いと根拠法令を図解でわかりやすく解説
クラス1〜4の区分と、クラスごとに必要な手続き・業態許可、根拠法令の3階層を解説しています。 - 医療機器の該当性・クラス分類の調べ方|実務フローで判断
自社製品の一般的名称(JMDN)とクラスを、実務手順に沿って特定する方法を解説しています。 - 医療機器の該当性・クラス分類チェッカー
設問に答える形式で、該当性とクラス分類の見当をその場で確認できます。 - クラス分類ごとの必要手続き(届出・認証・承認)
特定したクラスに応じて、製造販売の届出・認証・承認のどれが必要になるかを整理しています。
