医療機器の三役とは|総括・国内品質・安全管理の要件と兼務の可否

1.このページの目的

医療機器の製造販売業許可を取ろうとして、最初に止まるのが人の確保です。総括製造販売責任者・国内品質業務運営責任者・医療機器等安全管理責任者。この3つをまとめて「三役」と呼びます。

小さな会社では「3人も置けない、誰かが兼ねられないか」という話になります。結論を先に書くと、兼務できる範囲は業態(第一種・第二種・第三種)によって違います。そして、その根拠が省令にあるものと通知にあるものが混在しており、ここが誤解の温床になっています。

このページでは、三役それぞれの根拠条文と資格要件、そして兼務がどこまで認められるのかを、根拠の種類を区別しながら整理します。

2.三役とは

役職担当根拠
医療機器等総括製造販売責任者製造管理・品質管理・製造販売後安全管理の総括薬機法第23条の2の14第1項
国内品質業務運営責任者国内の品質管理業務(市場への出荷の決定など)QMS省令第72条第1項
医療機器等安全管理責任者安全確保業務(安全管理情報の収集・検討・措置)GVP省令第4条第2項ほか

3つがそれぞれ別の法令に根拠を持っている、という点がまず重要です。総括は薬機法本体と施行規則、国内品質業務運営責任者はQMS省令、安全管理責任者はGVP省令です。だから要件の書きぶりも揃っていません。

3.総括製造販売責任者

(1)役割と根拠

医療機器の製造販売業者は、厚生労働省令で定める基準に該当する者を総括製造販売責任者として置かなければなりません。(薬機法第23条の2の14第1項)

令和元年の法改正で、総括は「業務を遂行し、事項を遵守するために必要な能力及び経験を有する者でなければならない」と明記されました。(同条第2項)資格要件を形式的に満たすだけでなく、実際に業務を回せる人であることが求められています。

(2)資格要件

要件は薬機法施行規則第114条の49に定められています。扱う医療機器の区分で2つに分かれます。いずれか一つに該当すればよいのがポイントです。

第一種・第二種(高度管理医療機器・管理医療機器)の場合(同条第1項)

学歴実務経験講習
第1号大学等で物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学又は歯学の専門課程を修了不要不要
第2号高校等で同分野の専門課程を修了品質管理又は製造販売後安全管理の業務に3年以上不要
第3号問わない品質管理又は製造販売後安全管理の業務に5年以上登録を受けた者が行う講習の修了が必要
第4号厚生労働大臣が第1号から第3号と同等以上の知識経験を有すると認めた者

第三種(一般医療機器)の場合(同条第2項)

学歴実務経験
第1号高校等で上記分野の専門課程を修了不要
第2号高校等で上記分野の科目を修得品質管理又は製造販売後安全管理の業務に3年以上
第3号厚生労働大臣が第1号・第2号と同等以上の知識経験を有すると認めた者

実務でつまずきやすいのが、実務経験としてカウントできる品目の範囲が第1項と第2項で違う点です。第1項第2号は「医薬品、医療機器又は再生医療等製品」、第2項第2号は「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品」となっています。化粧品での品質管理経験は第三種では使えますが、第一種・第二種では使えません。

*体外診断用医薬品の製造販売業では、総括は原則として薬剤師です。(薬機法第23条の2の14第1項)上記の学歴・実務経験の要件は医療機器のものです。

(3)意見は「書面で」述べる

総括は、製造管理・品質管理・製造販売後安全管理を公正かつ適正に行うために必要があるときは、製造販売業者に対し意見を書面により述べなければなりません。(薬機法第23条の2の14第3項)

そして、その意見を記載した書面の写しを5年間保存する必要があります。(薬機法施行規則第114条の50第2項)「書面により」は令和元年改正で明文化された部分です。口頭で伝えて終わり、では要件を満たしません。

同項では、法令及び実務に精通して公正かつ適正に業務を行うこと、国内品質業務運営責任者および安全管理責任者と相互に密接な連携を図ることも遵守事項とされています。

4.国内品質業務運営責任者

(1)役割と根拠

製造販売業者は、国内の製品の品質を管理する業務の責任者として、国内に所在する施設に国内品質業務運営責任者を置かなければなりません。(QMS省令第72条第1項)

業務の中で最も重い判断が、市場への出荷の決定です。ロットごとに出荷可否を決定し、記録を作成します。(同条第2項第3号)そのほか、変更情報や品質情報の収集と報告、回収時の対応、安全確保措置に関する情報を安全管理統括部門へ遅滞なく文書で提供することなどが定められています。

(2)資格要件

ここが総括と決定的に違います。次のすべてを満たす必要があります。(QMS省令第72条第1項各号)

  • 製造販売業者における品質保証部門の責任者であること
  • 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること
  • 国内の品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
  • 医療機器等の販売に係る部門に属する者でないことその他、適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること

「品質保証部門の責任者であること」が要件に入っているため、組織図の上でその人が品質保証部門の長になっていなければなりません。人を選ぶ前に、部門の設計が必要だということです。営業部門の責任者を兼ねさせることもできません。

*一般医療機器のうち一定のもののみを扱う「限定第三種医療機器製造販売業者」については、QMS省令の一部の規定が適用除外となります。ただし国内品質業務運営責任者を置く義務そのものは免除されません。適用除外の範囲は条文ごとに書き分けられているため、個別に確認が必要です。

5.医療機器等安全管理責任者

(1)業態区分によって条文が変わる

GVP省令は製造販売業者を第一種・第二種・第三種に区分しており、医療機器は次のように対応します。(GVP省令第2条第8項〜第10項)

GVP省令の区分医療機器では根拠条文
第一種製造販売業者高度管理医療機器GVP省令第4条
第二種製造販売業者管理医療機器・体外診断用医薬品GVP省令第13条
第三種製造販売業者一般医療機器GVP省令第15条(第13条を準用)

(2)第一種の場合の要件

第一種では、まず安全管理統括部門を置く必要があります。この部門は総括の監督下にあり、販売部門その他支障を及ぼすおそれのある部門から独立していなければなりません。(GVP省令第4条第1項)

そのうえで、次のすべてを満たす者を安全管理責任者として置きます。(同条第2項)

  • 安全管理統括部門の責任者であること
  • 安全確保業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること
  • 安全確保業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
  • 医薬品等の販売に係る部門に属する者でないこと等

(3)第二種・第三種の場合の要件

第二種では要件が2つに減ります。(GVP省令第13条第2項)

  • 安全確保業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
  • 医薬品等の販売に係る部門に属する者でないこと等

「3年以上の従事経験」も「統括部門の責任者であること」も要件になっていません。ここが第一種との最大の差です。第三種は第15条により第13条が準用されるため、要件は第二種と同じです。

(4)安全確保業務とは

安全確保業務は、安全管理情報の収集、検討、その結果に基づく必要な措置という3段階で構成されます。(GVP省令第2条第2項)

  • 収集:医療関係者からの情報、学会報告・文献、厚生労働省やPMDA・都道府県からの情報、外国政府等からの情報など(第7条)
  • 検討:遅滞なく検討して結果を記録し、廃棄・回収・販売停止・添付文書の変更等の措置を立案。総括製造販売責任者に文書で報告し写しを保存(第8条)
  • 実施:総括が行う業務と安全管理責任者が行う業務に分かれる(第9条)

6.「いずれか」と「すべて」を取り違えない

許可申請の準備でよくある事故が、要件の読み違いです。

役職要件の満たし方
総括製造販売責任者各号のいずれかに該当すればよい
国内品質業務運営責任者各号のすべてを満たす必要がある
安全管理責任者(第一種)各号のすべてを満たす必要がある

総括だけが「いずれか」です。国内品質業務運営責任者について「3年の経験があるから大丈夫」と考えていたら、品質保証部門の責任者になっていなかった、というのが典型的なつまずき方です。

7.兼務はどこまでできるか

(1)根拠が2種類あることを押さえる

兼務について調べると情報が錯綜しますが、根拠を分けて考えると整理できます。

省令に明文があるもの

  • 総括製造販売責任者は、管理監督者・管理責任者または国内品質業務運営責任者を兼ねることができる(QMS省令第71条第2項)
  • 国内品質業務運営責任者は、管理責任者を兼ねることができる(QMS省令第72条第5項)

通知によるもの

安全管理責任者がからむ兼務については、GVP省令に明文がありません。根拠は平成26年8月6日付 薬食発0806第3号 厚生労働省医薬食品局長通知「薬事法等の一部を改正する法律等の施行等について」の記載です。

(2)業態別の早見表

組合せ第一種(高度管理)第二種(管理)・体外診第三種(一般)
総括 × 国内品質業務運営責任者
総括 × 安全管理責任者通知に掲げられていない国内品質業務運営責任者を兼務していない場合に限り可
三者すべての兼務不可不可

読み方を補足します。

第一種で通知が可能としているのは、総括と国内品質業務運営責任者の兼務だけです。総括と安全管理責任者の兼務は掲げられていません。GVP省令上、第一種の安全管理責任者は安全管理統括部門の責任者であり(第4条第2項第1号)、総括はその安全管理責任者を監督する立場にある(第3条第1号)ことからも、兼務は想定されていない構造です。

第二種は「どちらか一方」です。総括+国内品質業務運営責任者か、総括+安全管理責任者か。両方を同時に兼ねることはできません。

第三種だけが三者兼務を認められています。一般医療機器のみを扱う小規模事業者は、実質的に1人で三役を務めることが可能です。

(3)兼務全般にかかる前提条件

上記の通知は、兼務を認める前提として「同一所在地に勤務するものであって、それぞれの業務に支障を来さない等、兼務することに合理性がある範囲において可能とすること」としています。

つまり、業態区分の表で「可」になっていれば無条件に兼務できるわけではありません。勤務場所が同じであること、そして実際に両方の業務を回せることが条件です。

(4)製造業の責任技術者との兼務

同じ通知で、国内品質業務運営責任者と製造管理者または責任技術者の兼務が認められています。ただし条件が付いています。

  • 一の法人において製造販売業と製造業を併せて行う場合であること
  • 国内品質業務運営責任者がその業務を行う事務所と同一施設内に製造所があること

製造販売業の事務所と製造所が離れている場合は、この兼務はできません。

なお、総括製造販売責任者と製造業の責任技術者の兼務、および修理業の責任技術者との兼務については、この通知に記載がありません。責任技術者には製造や修理を「実地に管理」させることが求められている(薬機法第23条の2の14第5項)ため、慎重な検討が必要です。これらの組合せは所管の都道府県薬務課にご確認ください。

(5)ここは断定できない、という論点

次の点については、公開されている法令・通知の範囲で明確な可否を確認できませんでした。個別に所管窓口へ確認することをおすすめします。

  • 第一種・第二種において、国内品質業務運営責任者と安全管理責任者だけを兼務すること(通知は総括と他の2者との兼務を主題としており、この組合せを直接扱っていません)
  • 別法人との兼務(通知はいずれも「一の法人」を前提としています)

*同一法人内で複数の製造販売業を併せて行う場合については、同一所在地であれば総括同士・安全管理責任者同士・国内品質業務運営責任者同士の兼務ができる旨が通知に示されています。

8.常勤でなければならないのか

よく聞かれる質問ですが、薬機法・施行規則・QMS省令・GVP省令のいずれにも、製造販売業の三役に「常勤」を求める明文は見当たりません。「実地に管理」という文言があるのは製造業と修理業の責任技術者についてであり、総括製造販売責任者にはこの文言はありません。

ただし、実質的には常勤に近い勤務実態が求められます。

  • 兼務の通知が「同一所在地に勤務するもの」「業務に支障を来さない」を条件としている
  • 国内品質業務運営責任者はロットごとの出荷判定を行うため、日常的に判断できる状態でなければ業務が回らない
  • 自治体の案内では、総括について常勤を求める記載をしている例がある

「法令に常勤義務が書いてある」と説明するのは正確ではありませんが、非常勤で足りると考えるのも危険です。実際の運用は所管自治体によって差があるため、事前確認をおすすめします。

9.法令遵守体制(令和3年8月施行)と三役

令和3年8月1日から、製造販売業者に法令遵守体制の整備が義務づけられました。(薬機法第23条の2の15の2、薬機法施行規則第114条の68の2)

この改正で求められるようになったのは、主に次の点です。

  • 総括製造販売責任者が有する権限を明らかにすること(同条第1項第1号)
  • 総括・国内品質業務運営責任者・安全管理責任者に必要な権限を付与し、その業務を監督すること(同項第3号)
  • 従業者に対する法令遵守のための指針を示すこと、責任役員の権限と分掌する業務を明らかにすること(同項第4号)
  • 講じた措置の内容を記録し、適切に保存すること(同条第2項)

この改正の趣旨は、三役に集中していた責任を経営陣(責任役員)の責務として引き上げることにあります。許可申請書にも「薬事に関する業務に責任を有する役員の氏名」を記載することとされました。(薬機法第23条の2第2項第2号)

実務上は、三役を選任するだけでなく、その権限を文書で定め、教育訓練を実施し、記録に残すところまでが体制整備の範囲になります。手順書の整備が避けられません。

*平成26年の「QMS体制省令」と、この令和3年の「法令遵守体制」は別の制度です。どちらも「体制」という語が使われるため混同されがちですが、根拠も内容も異なります。

10.実際に指摘される点

自治体の監視指導の資料では、次のような指摘事例が公表されています。

  • 総括製造販売責任者と国内品質業務運営責任者を任命していたが、責任者の要件が手順書に規定されておらず、その者が要件を満たしているか不明だった
  • 薬機法施行規則第114条の50第2項の総括が遵守すべき事項について規定していなかった

いずれも「人は置いたが、文書化していない」という形です。三役の要件を手順書に書き、その人が要件を満たすことを記録で示せるようにしておく必要があります。

なお、名義だけの選任は、厚生労働大臣による変更命令の対象になり得ます。(薬機法第73条)令和3年改正以降は、必要な人員の確保と配置が法令遵守体制の要素とされているため、実体を伴わない選任は体制面の問題にも直結します。

11.よくある質問

Q. 社長が1人で三役を兼ねられますか。

第三種(一般医療機器のみ)であれば、通知上、三者の兼務が可能です。第一種・第二種ではできません。ただし第三種でも、総括の資格要件と国内品質業務運営責任者の4要件をその方が満たしている必要があります。特に「品質保証部門の責任者であること」「販売部門に属していないこと」は、小規模組織ほど設計に注意が必要です。

Q. 営業部長を安全管理責任者にできますか。

できません。安全管理責任者は販売に係る部門に属する者でないことが要件です。(GVP省令第4条第2項第4号、第13条第2項第2号)国内品質業務運営責任者も同様です。

Q. 医療機器の実務経験がなくても総括になれますか。

第一種・第二種であれば、施行規則第114条の49第1項第1号(大学等で指定分野の専門課程を修了)に該当すれば、実務経験がなくても要件は満たします。ただし令和元年改正で「必要な能力及び経験を有する者」であることが明記されており、形式要件を満たすだけでは足りないという趣旨です。

Q. 三役が退職したらどうなりますか。

後任を選任し、変更の届出が必要です。空席のまま業務を続けることはできません。特に国内品質業務運営責任者が不在になると、市場への出荷判定を行う者がいなくなるため、出荷そのものが止まります。後任候補をあらかじめ想定しておくことをおすすめします。

12.ご注意

本ページは公開されている法令・通知および実務経験に基づいて記載しています。兼務の可否は業態区分・勤務実態・組織構成によって判断が分かれ、最終的には所管の都道府県薬務課の運用によります。個別の体制を設計される際は、事前にご相談されることをおすすめします。制度改正により内容が最新でない場合もありますので、一次情報の確認とあわせてご利用ください。

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