1.このページの目的
海外の医療機器を日本で販売したい、という相談は医療機器分野の新規参入で最も多い形です。ところが「輸入するだけなら許可は要らないのでは」「海外で認証を受けているから大丈夫では」という誤解も、同じくらいよくあります。
結論から書くと、輸入した医療機器を日本国内で販売する行為は、薬機法上の「製造販売」にあたります。(薬機法第2条第13項)つまり、自社で何も作っていなくても、製造販売業許可が必要です。
このページでは、医療機器を輸入して販売するために必要な許可・登録・品目手続きの全体像を、輸入者側と海外の製造所側に分けて整理します。
2.「輸入して売る」は法律上「製造販売」にあたる
薬機法は「製造販売」を、製造をし、又は輸入をした医療機器等を販売し、貸与し、若しくは授与することと定義しています。(薬機法第2条第13項)
ここが出発点です。「製造販売業」という名称から、自社工場を持つ会社の話だと受け取られがちですが、そうではありません。海外メーカーの製品を輸入して国内に売る事業者は、製造行為をしていなくても製造販売業者です。
そして製造販売業者は、その製品について国内で最終的な責任を負う立場になります。品質管理(QMS)と製造販売後安全管理(GVP)の体制を自社に持ち、不具合が起きれば行政に報告し、必要なら回収を判断する。輸入代理店という言葉から想像されるより、はるかに重い役割です。
3.輸入に必要な許可・登録の全体像
輸入して販売するまでには、大きく分けて「業(ぎょう)の許可・登録」と「品目ごとの手続き」の2系統があります。まず業の側から整理します。
| 誰が | 何を取るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 輸入して販売する日本の事業者 | 医療機器製造販売業許可 | 薬機法第23条の2第1項 |
| 海外の製造所 | 医療機器等外国製造業者の登録 | 薬機法第23条の2の4 |
| 国内で最終製品を保管する施設 | 医療機器製造業の登録 | 薬機法第23条の2の3第1項 |
(1)医療機器製造販売業許可(輸入する側)
扱う医療機器の区分に応じて、3種類に分かれます。(薬機法第23条の2第1項)
| 扱う医療機器 | 必要な許可 | 一般にいうクラス |
|---|---|---|
| 高度管理医療機器 | 第一種医療機器製造販売業許可 | クラスⅢ・Ⅳ |
| 管理医療機器 | 第二種医療機器製造販売業許可 | クラスⅡ |
| 一般医療機器 | 第三種医療機器製造販売業許可 | クラスⅠ |
*法令の条文はクラス番号ではなく「高度管理医療機器」「管理医療機器」「一般医療機器」という区分で書かれています。クラスⅠ〜Ⅳは、この区分に対応する説明上の呼び方です。詳しくは「医療機器のクラス分類とは」をご覧ください。
許可の有効期間は5年です。(薬機法第23条の2第4項、薬機法施行令第36条)
なお条文上は「厚生労働大臣の許可」と書かれていますが、人体用の医療機器に関する事務は薬機法施行令第80条により都道府県知事が処理することとされており、実際の申請先は主たる機能を有する事務所の所在地を管轄する都道府県です。解説によって「厚生労働大臣の許可」と書かれていたり「都道府県知事の許可」と書かれていたりするのは、このためです。
許可を受けるには、いわゆる三役(総括製造販売責任者・国内品質業務運営責任者・医療機器等安全管理責任者)の確保が必要です。実務上ここが最大のボトルネックになります。詳しくは「医療機器の三役とは」で解説しています。
(2)医療機器等外国製造業者の登録(海外の製造所)
海外の製造所についても、日本の制度に登録しておく必要があります。(薬機法第23条の2の4)有効期間は5年で、申請窓口は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)です。
ここで一点、条文の読み方に注意が必要です。第23条の2の4第1項は「登録を受けることができる」という書き方になっており、文言としては任意です。しかし、承認や認証を与えない事由として「申請に係る医療機器を製造する製造所が登録を受けていないとき」が定められています。(薬機法第23条の2の5第2項第2号、第23条の2の23第2項第3号)
つまり、未登録の外国製造所を記載した申請は承認・認証されません。PMDAも「当該医療機器等の製造販売承認の要件となっています」と説明しています。条文上は任意だが、承認・認証の要件として事実上必須、と理解しておくのが正確です。
登録が必要になるのは、次の製造工程を行う製造所です。(薬機法施行規則第114条の8)
- 設計
- 主たる組立てその他の主たる製造工程
- 滅菌
- 国内における最終製品の保管
このうち「国内における最終製品の保管」は、性質上、海外の製造所には当てはまりません。したがって外国製造業者の登録で実際に問題になるのは、設計・主たる組立て等・滅菌の3つです。
見落としやすいのは、完成品を組み立てる工場だけが対象ではないという点です。設計に責任を持つ拠点が別会社・別国にある場合や、滅菌を外部の滅菌業者に委託している場合、それぞれが登録の対象になり得ます。海外メーカーに製造所の構成を確認するところから始めてください。
(3)国内の製造業登録が必要になる場合
輸入品であっても、国内の施設が上記の製造工程を行う場合は、その施設について製造業の登録が必要です。(薬機法第23条の2の3第1項、薬機法施行規則第114条の8)
輸入で実際に問題になるのは「国内における最終製品の保管」です。PMDAの資料では、これは「市場への出荷判定時に製品を保管している施設」と説明されています。輸入した製品をいったん自社倉庫に入れ、そこで出荷可否を判断して出荷する、という運用であれば、その倉庫は登録の対象になります。
逆に、包装や表示だけを行い最終製品を保管していない施設は対象にならない、という整理が示されています。ただしこの線引きは倉庫の使い方や出荷判定のタイミングによって変わり、個別の判断は所管する都道府県薬務課の領域です。倉庫の運用を決める前に相談されることをおすすめします。
*製造販売業許可では製造行為はできません。この2つは別の業態です。「医療機器製造業の登録とは」もあわせてご覧ください。
4.品目ごとの手続きと外国製造所の関係
業の許可・登録が整っても、それだけでは製品を売れません。製品(品目)ごとの手続きが別に必要です。クラスに応じて届出・認証・承認の3ルートに分かれます。
| 区分 | 品目の手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般医療機器(クラスⅠ) | 製造販売の届出 | 薬機法第23条の2の12第1項 |
| 指定高度管理医療機器等 | 登録認証機関による認証 | 薬機法第23条の2の23第1項 |
| 上記以外 | 厚生労働大臣の承認 | 薬機法第23条の2の5第1項 |
いずれのルートでも、申請書や届書には製造所の名称・登録番号・製造工程を記載します。ここで外国製造業者の登録番号が必要になるため、品目の手続きより先に、海外の製造所の登録を済ませておく必要があります。輸入のスケジュールを組むとき、ここを後回しにすると全体が止まります。
また承認を受けようとするときは、製造管理・品質管理の方法がQMS省令に適合しているかについて、厚生労働大臣の調査(QMS適合性調査)を受けなければなりません。(薬機法第23条の2の5第6項)調査に適合すると基準適合証が交付されます。(薬機法第23条の2の6)
この調査の対象には、申請書に記載された登録製造所が含まれます。外国の製造所も登録製造所である以上、調査対象です。海外メーカーに対して、日本のQMS省令への適合を説明できる資料の提出を求めることになるため、契約段階で協力体制を取り決めておくことが実務上重要になります。
*届出・認証・承認の分かれ方は「医療機器の届出・認証・承認の違い」で詳しく解説しています。
5.選任製造販売業者という別ルート
ここまでは、日本の事業者が自ら承認・認証・届出を取得する形(通常ルート)を前提にしてきました。これとは別に、海外の製造業者本人が承認・認証の名義人となる制度があります。
| 通常ルート | 外国特例ルート | |
|---|---|---|
| 承認・認証の名義人 | 日本の製造販売業者 | 海外の製造業者本人 |
| 選任製造販売業者 | 不要 | 必須 |
| 根拠(承認) | 薬機法第23条の2の5 | 薬機法第23条の2の17 |
| 根拠(認証) | 薬機法第23条の2の23 | 薬機法第23条の3 |
外国特例ルートでは、海外の製造業者が承認を受ける際に、国内で保健衛生上の危害の発生防止に必要な措置をとらせるため、日本の製造販売業者を選任しなければなりません。(薬機法第23条の2の17第3項)この選任された事業者を「選任外国製造医療機器等製造販売業者」といいます。(同条第4項)
選任される側には、その品目の種類に応じた製造販売業許可が必要です。つまり「選任だから許可は要らない」ということはありません。
どちらのルートを選ぶかは、承認を誰の資産として持つか、代理店契約が終了したときに製品の権利がどう動くか、といった事業上の判断と直結します。海外メーカー側が承認を自社名義で保持したいと考えるケースもあり、契約交渉の論点になります。制度としてどちらが多いかを示す公的な統計は確認できていないため、件数の多寡ではなく、自社の事業設計から選ぶべき論点だとお考えください。
6.通関のときに必要になるもの
ここは医療機器と医薬品で扱いが違うため、他分野の情報をそのまま当てはめると間違えます。
薬機法施行規則第94条・第95条に「輸入に係る手続」の規定がありますが、これは条文の見出しのとおり医薬品・医薬部外品・化粧品を対象とするもので、医療機器は含まれていません。医療機器について「輸入届書」を提出するという説明を見かけたら、旧制度か他分野の情報の可能性があります。
医療機器を業として輸入する場合、税関に対しては、承認書・認証書・届書の写しと、輸入者の製造販売業許可証の写しを提示する取扱いになっています。製造業者が原材料等を輸入する場合は、製造業登録証の写しになります。
一方、業として販売する目的ではない輸入(試験研究用、社内見本、展示用、医療従事者個人用、治験用など)については、輸入確認証が必要になる場合があります。これは薬機法第56条の2に基づく「輸入の確認」で、医療機器には第64条により準用されます。令和2年9月1日から、従来「薬監証明」と呼ばれていたものがこの輸入確認証に変わりました。申請先は関東信越厚生局または近畿厚生局です。
業として輸入・販売するのに輸入確認証を取ればよい、というのは誤りです。その場合は製造販売業許可と品目手続きの系統で処理します。
*通関の取扱いは通達の改正が比較的多い領域です。実際の通関手続きにあたっては、税関および厚生局の最新の案内をご確認ください。
7.輸入でよくある誤解
(1)「輸入するだけなら許可は要らない」
誤りです。薬機法第2条第13項が「輸入をした」医療機器を販売等することを製造販売と定義しているため、製造販売業許可が必要です。
(2)「海外で認証を受けているから日本でも売れる」
誤りです。日本の薬機法上の医療機器に該当する以上、日本の制度に基づく届出・認証・承認が別途必要です。海外で医療機器として販売されている製品でも、日本の基準に適合しない場合があります。
(3)「製造販売業許可があれば製造もできる」
誤りです。製造販売業と製造業は別の業態で、製造販売業許可では製造行為はできません。国内で保管等を行う場合は製造業登録が別に必要になります。
(4)「そもそも医療機器ではないと思っていた」
実は、これが一番多い入口の誤りです。海外では雑貨や健康器具として売られている製品が、日本では医療機器に該当することがあります。輸入の可否を検討する前に、まず該当性の判断が必要です。「医療機器の該当性・クラス分類の調べ方」をご覧ください。
(5)「個人輸入したものを売る」
認められません。個人輸入した医薬品等を他人に売ったり譲ったりすることはできず、他人の分をまとめて輸入することもできません。
8.輸入開始までの流れ
一般的な進め方は次のとおりです。*自治体により手続きの詳細は異なるため、申請先の都道府県窓口への事前確認をおすすめします。
- 製品が日本の薬機法上の医療機器に該当するかを判断する
- 該当する場合、一般的名称とクラス分類を特定し、届出・認証・承認のどのルートかを確定する
- クラスに応じた製造販売業許可の種類を確定し、三役を確保する
- QMS・GVPの体制と手順書を整備する
- 製造販売業許可を申請する
- 海外メーカーに製造所の構成(設計・組立て・滅菌)を確認し、外国製造業者の登録を進めてもらう
- 国内で最終製品を保管する場合は、その施設の製造業登録を申請する
- 品目の届出・認証申請・承認申請を行う(承認・認証ではQMS適合性調査を受ける)
- 通関に必要な書類をそろえて輸入を開始する
実務では、3〜6が並行します。特に外国製造業者の登録は海外メーカー側の作業になるため、こちらの都合では進みません。早い段階でメーカーに依頼し、スケジュールに余裕を持たせておくことが、輸入案件全体の進行を左右します。
9.よくある質問
Q. サンプルを取り寄せて評価したいだけですが、許可は必要ですか。
販売を目的としない試験研究用・社内見本用の輸入であれば、製造販売業許可ではなく輸入確認証の系統になる場合があります。ただし、そのサンプルをそのまま販売することはできません。数量や用途によって扱いが変わるため、厚生局にご確認ください。
Q. 海外メーカーがISO 13485の認証を持っていれば、QMS適合性調査は不要ですか。
不要にはなりません。日本のQMS省令に基づく調査は別に行われます。ISO 13485の認証や関連する文書は、調査に対応するうえで有力な資料になりますが、それ自体が調査に代わるものではありません。
Q. 展示会に出品するために輸入したいのですが。
展示用の輸入は輸入確認証の対象となる場合があります。展示会の主催者が輸入者となるケースなど、状況によって扱いが異なります。
Q. 外国製造業者の登録は、輸入する側が代行できますか。
登録の申請者は外国製造業者本人です。ただし実務上、日本側が資料の準備や手続きの支援を行うことは一般的です。海外メーカーにとって日本の制度は不慣れなことが多いため、輸入者側がリードしたほうが早く進みます。
10.ご注意
本ページは公開されている法令・通知および実務経験に基づいて記載していますが、制度の適用は個別の事情によって異なります。特に、国内の保管施設に製造業登録が必要かどうか、どのルートで品目手続きを行うかについては、所管の都道府県薬務課への事前確認をおすすめします。制度改正により内容が最新でない場合もありますので、一次情報の確認とあわせてご利用ください。