GVP省令とは何か(根拠法令と対象範囲)
GVPとは “Good Vigilance Practice” の略で、医療機器を含む医薬品・医薬部外品・化粧品・再生医療等製品すべてに共通する製造販売後安全管理の基準です。正式名称は「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第135号)で、実務では単に「GVP省令」と呼ばれます。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第23条の2の2第1項第2号は、「製造販売後安全管理の方法が厚生労働省令で定める基準に適合しないとき」を許可を与えない事由として規定しており、この「厚生労働省令で定める基準」がGVP省令にあたります(医薬品については第12条の2第1項第2号、再生医療等製品については第23条の21第1項第2号が同様の根拠になります)。つまり、製造販売業許可を取得する事業者は、この省令が定める体制を整備することが許可要件そのものになっています。GVPは「あればよい社内ルール」ではなく、許可を維持するための必須条件です。
対象となるのは、第一種・第二種・第三種いずれの医療機器製造販売業者も含まれますが、後述のとおり業態区分によって求められる体制の厚みは異なります。

GVP省令が求める3つの体制要素
GVP省令が製造販売業者に求めているのは、大きく分けて次の3つです。
- 安全管理業務に関する手順書の作成:情報収集、検討、安全確保措置の立案・実施・記録の各プロセスを明文化した手順書(一般的に「GVP手順書」と呼ばれます)を整備すること
- 業務運営体制の整備:安全管理責任者を含む、安全確保業務を適正かつ円滑に実施できる人員配置と組織体制を構築すること
- 安全確保業務の適正な実施:手順書に基づき、実際に情報収集から措置の実施・記録までを継続的に回すこと
これらは一度整備して終わりではなく、PDCAサイクルとして継続的に運用されることが前提です。QMS省令が「製品の品質」を担保する仕組みであるのに対し、GVP省令は「市場に出た後の安全性」を担保する仕組みという役割分担になります。

安全確保業務の基本フロー
GVPにおける安全確保業務は、おおむね次の流れで進みます。
情報収集 → 検討(解析・評価) → 安全確保措置の立案 → 総括製造販売責任者への報告・決定 → 措置の実施 → 記録の保管
情報源は医療機関、販売店、修理受託者、文献、学会情報、海外の規制当局や関連会社からの情報など多岐にわたります。GVP省令第8条は、収集した安全管理情報を安全管理責任者が「遅滞なく検討」することを求めており、具体的な検討頻度(月1回など)は条文上定められていません。そのため多くの企業は、自社の手順書の中で「月1回以上」「案件発生の都度、遅滞なく」といった具体的な検討タイミングを自主的に定め、行政への報告義務の有無や、回収・添付文書改訂・情報提供などの措置が必要かどうかを判断する運用にしています。
措置が必要と判断された場合は、安全管理責任者が措置案を文書化し、総括製造販売責任者に報告したうえで、総括製造販売責任者が実施の可否を決定します。決定後は安全管理実施責任者などが実務を担い、実施結果を記録・報告して一連のサイクルが完了します。

業態区分(第一種・第二種・第三種)による違い
医療機器の製造販売業許可は、取り扱う製品のリスクに応じて第一種・第二種・第三種に区分されており、GVP省令上求められる体制にも差があります。
- 第一種医療機器製造販売業(高度管理医療機器を扱う):GVP省令第4条第2項に基づき、安全管理責任者は「安全管理統括部門の責任者であること」「安全確保業務等に3年以上従事した経験」「業務遂行能力」を満たす必要があり、最も厳格な体制整備が求められます
- 第二種医療機器製造販売業(管理医療機器を扱う):同省令第13条第2項・第14条により、安全管理責任者には業務遂行能力と販売部門からの独立性が求められる一方、第一種のような統括部門設置までは必須とされず、体制はやや簡略化されます
- 第三種医療機器製造販売業(一般医療機器を扱う):同省令第15条により、第一種の規定の一部を除外した、相対的に簡略化された体制で足りるとされていますが、手順書の整備自体は推奨されます
自社が新規参入時にどの区分に該当するかによって、必要な人員・体制の設計が変わってくるため、許可申請の準備段階からGVP体制を織り込んで検討することが重要です。

GVPカテゴリの記事構成
このカテゴリでは、GVP省令が求める実務を機能ごとに分解し、以下の記事で詳しく解説しています。
- 安全管理情報の収集・処理の実務
- 苦情処理・回収の実務フロー
- 不具合報告(PMDA報告)の実務ポイント
- 安全管理責任者に求められる要件と役割
- QMS(品質管理体制)との連携のつくり方
新規参入を検討している事業者の方は、まず本ページで全体像をつかんだうえで、各論の記事に進んでいただくことをおすすめします。

参考にした一次情報(執筆時点の公開情報)
- 厚生労働省「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(平成16年9月22日厚生労働省令第135号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6391&dataType=0&pageNo=1
- 東京都健康安全研究センター「製造販売業者に係る法改正の概要(QMS省令・体制省令・GVP省令について)」https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/files/k_iryou/k-kanshi/k_seihantop/e37e03551023875a566852e0560b7fbd.pdf
- 福岡県庁「GVP省令について」(根拠条文:薬機法第12条の2第1項第2号・第23条の2の2第1項第2号・第23条の21第1項第2号)https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/gvp.html
- 厚生労働省「医薬品等回収関連情報」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kaisyu/index.html
- PMDA「不具合が疑われる症例報告に関する情報」https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/devices/0090.html
- PMDA「医療機器による不具合等報告に係る報告書の記載方法について」https://www.pmda.go.jp/safety/reports/mah/0019.html
- 日本画像医療システム工業会(JIRA)「医療機器の製造販売後安全管理に係る安全管理業務(GVP)手順書(案)」https://www.jira-net.or.jp/anzenkanri/02_seizouhanbaigo/file/20141114_gvp_Rev01.pdf
- 大阪府「医療機器等製造販売後安全管理業務について」https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/122614/siryo1.pdf